富裕層の新たな社会貢献

―非上場株式寄附とは―

~基礎セミナー公開と担当者研修のお知らせ~

· 非上場株式寄附,全国株式寄附協会準備委員会

日本でも注目が高まる「非上場株式寄附」。株式を活用した新しい寄附のあり方は、富裕層の終活、節税、そして社会貢献を同時にかなえる方法として、静かに広がり始めています。本記事では、セミナーで紹介された最新情報をもとに、非上場株式寄附の概要と可能性をわかりやすく解説します。

  1. 非上場株式寄附とは?

  2. なぜ今、非上場株式寄附なのか

  3. 非上場株式寄附の制度・法律

  4. アメリカの先行事例

  5. 日本における成功例

  6. 日本の課題と今後の展望

  7. まとめ──「屋根裏部屋に光を」

  8. セミナー資料ダウンロードはこちら

はじめに

日本ではいま、「非上場株式寄附」という新しい寄附の形が注目を集めています。これは、富裕層の社会貢献や終活における重要な選択肢であると同時に、寄附市場の可能性を大きく広げるものです。

1. 非上場株式寄附とは?

非上場株式寄附とは、
個人が保有する非公開株式を、現物寄附として慈善団体などに提供する仕組みを指します。

この寄附では、条件を満たせば通常課される「みなし譲渡所得税」が非課税となり、寄附者にとって大きな税制メリットが得られます。
また、受け入れた団体は株式を保有し続けることで、継続的に配当金を受け取り、安定した資金源とすることができます。

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節税と社会貢献を同時に実現できるこの仕組みは、富裕層にとって非常に魅力的な選択肢となり得ます。
なお、この非上場株式寄附は、租税特別措置法第40条に明確な法的根拠を持っており、完全に合法的に実施可能です。

2. なぜ今、非上場株式寄附なのか

現在、日本社会では少子高齢化が進行し、個人の資産承継に伴う課題が増大しています。
特に富裕層にとっては、相続税・所得税の負担が重くなっており、資産の有効活用が求められています。

そのなかで、非上場株式寄附は、「節税」と「社会貢献」という二つの価値を同時に実現できる新しい選択肢として浮上しています。

加えて、近年の法改正により、認定NPO法人などへの寄附も対象に加わり、実務面でも実行可能性が飛躍的に高まりました。
こうした制度整備により、非上場株式寄附は今後ますます注目を集めると考えられます。

3. 非上場株式寄附の制度・法律

非上場株式寄附は、生前に実行することも、遺言によって遺贈することも可能です。
特に、生前に寄附を行うことで、手続きの確実性やタイムラインのコントロールがしやすく、実務上は生前寄附が推奨されます。

制度面では、租税特別措置法第40条が生前寄附に、第70条が遺贈に対応しており、両者は一対の関係になっています。
この制度により、寄附者はみなし譲渡所得税の非課税措置を受けることができ、団体側も長期的な資金源を確保できます。

ただし、制度利用には厳格な要件(公益性の確保、基金設置、特別利益の禁止など)が求められており、適正な手続きを踏むことが重要です。

4. アメリカの先行事例

アメリカでは、非上場株式寄附は既に一般的な手段となっています。
UCバークレー大学やデューク大学、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など、数多くの機関がこのスキームを活用しています。

特にドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を通じた寄附が盛んであり、2022年には非現金資産による助成総額が約521億ドル(約7.8兆円)に達しました。
その中でも非公開株式は9%を占めています。

DAFを利用することで、寄附者はキャピタルゲイン税を回避し、所得控除を受けながら、社会貢献活動を支援することが可能になります。
こうした先進事例は、日本の今後の参考にもなります。

5. 日本における成功例

2020年、国立大学法人に対して初めて行われた非上場株式寄附は、日本における画期的な成功事例となりました。
本件では、大学側が基金を設置し、寄附受け入れのための体制を整えたことで、寄附から承認まで半年以内でスムーズに実現しています。

また、寄附後には国税庁への非課税申請も迅速に行われ、寄附者と大学双方にとって大きなメリットをもたらしました。
この事例は、全国における非上場株式寄附の普及に向けた重要なモデルケースと位置づけられています。

6. 日本の課題と今後の展望

日本には、非上場株式寄附を拡大するための大きな潜在力があります。
推計では、非上場株式寄附の潜在市場規模は約200兆円に達する可能性があるとされています。

しかしながら、現時点では

認知度の低さ

成功事例の少なさ

  • 実務ノウハウの不足といった課題が存在します。
  • 今後は、米国の事例を参考にしながら、

富裕層への周知啓発

  • 受入側団体の体制整備
  • ファンドレイザー人材の育成といった取り組みを進めることが求められます。

7. まとめ──「屋根裏部屋に光を」

非上場株式寄附は、まるで寄附市場の「屋根裏部屋」に隠れている宝のような存在です。
社会貢献の意欲を持つ寄附者と、資金を必要とする公益団体とをつなぐ、未来志向の仕組みでもあります。

今後、非上場株式寄附が広く知られ、適切に活用されることで、寄附文化そのものに大きな変革がもたらされるでしょう。

全国株式寄附協会準備委員会も、この新しい市場の創造に向け、活動を続けています。

8. セミナー資料ダウンロードはこちら

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